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「とりあえず今の段階で分かっている情報をくださいよ。」
まぁ、怒っていても仕方ないので先を進める。
なんせ、情報は鮮度が命ですから。
「そうだな。近々崩壊が予想される第66管理世界の現地偵察の為、本局時空航行艦隊所属の新造艦クラウディアが派遣された。出発から2日後の1300時、現地に到着。その1時間後の1400時に情報収集を開始。計画では3日間の任務のはずだった。」
アルフレッドが情報課が提出してきた報告書を読み上げる。
なんの脚色もない。ただ、事実のみで固められた報告書。
だが、この程度なら自分でも調べられる。
結局、本局のデータベースから引っ張り出しただけの情報だ。
それでも聞かないよりはマシだろうと耳を傾ける。
「調査開始から2時間後の1600時。調査隊の約半数が落とされる。一瞬にしてだ。緊急通信を受けた艦長は、直ぐに救助隊を派遣したが時既に遅く、救助隊が救助を求める事態になった。そこで助けに向かったのが先に出てきた執務官だ。」
アルフレッドは淡々と読み続ける。
一応飽きないようにと自分なりに話しているようだが、正直言って飽きてきた。
てか、最初から読んでるから長いんだよな。俺としては戦闘時の状況と執務官の情報さえ聞ければ充分なんだけど。
とりあえず黙って聞き続ける。
「下に降りると同時に戦闘開始。状況はレコーダーのデータを見るなり本人から聞くなりした方が良いだろう。とにかく戦闘開始から約30分程で相手は退いていったそうだ。」
アルフレッドが顔を上げる。
どうやら今の段階で分かっているのはこれ位のようだ。
何も言わずにいる事から俺の言葉を待っているように見える。
「う~ん。退いて行ったのが気になりますね。アイツなら間違い無くその場で全員を殺すと思ってたんスけどね。」
今までの例を見ても遭遇したヤツらは皆、その場でその瞬間に殺されてる。
自ら退くなんてケースは初めての事だ。
「まぁ、何はともあれその執務官って運が良いんスね。死なないで済んだんスから。」
そう、運が良かったとしか思えない。
アイツが殺さずに逃げるなんて考えられないから。
なのに、目の前のアルフレッドは薄く笑っている。
それが無性にムカついて仕方ない俺。
なんか負けたような気になる。
「あながち運だけとは言い切れんぞ。なにせその執務官はかの有名な<フェイト・T・ハラオウン>なのだからな。」
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