5人が本棚に入れています
本棚に追加
この夏はひきこもりに徹していた私が、久しぶりに外出した。
ただ近所のコンビニへ行っただけだが。
アイスクリームが食べたくなり、五百円玉を握りしめてコンビニへ。
奮発して買ったチョコレート味のハーゲンダッツが入ったビニール袋をぶら下げて帰る。
子ども達が無邪気に遊ぶ(馬鹿じゃなかろうか、こんなクソ暑い日に)公園の側を歩いていると蝉がやかましい。
ミンミンだかジィジィだか、そんな鳴き声で雌が誘惑できるのか。
もしかしたら、人間の聴域では聞き取れない高い音で、美しい鳴き声を響かせているかもしれない。
いないかもしれない。
公園に一定距離で植えてある七本の木の内、一本を眺めた。
鼓膜が破れそうなくらい(誇大表現しすぎだろうか)鳴いている蝉はいるはずなのに、奴らはなかなか上手く隠れるのだ。
私の目が悪いだけなのか。
いや、次に見た木の幹には、五・六匹止まっていた。
ただ単にさっきの木の樹液が不味かっただけらしい。
ミンミン、ジィジィ、シワシワ。
アブラ蝉、ミンミン蝉、クマ蝉。
もちろん、どの蝉がどんな鳴き声しているかなんて聞き取れない。
聞いているとだんだん、セミセミセミと鳴いているように思えた。
そういや弟が「死ね死ね」って鳴いてるようにも聞こえるぜ、と言っていた。
死ね死ね死ィね。
なるほど、聞こえないこともない。
誰に死ねって言ってるんだろう。
今、君ら蝉の仲間を虫取り網で捕らえている人間の子供にかな。
それとも、太陽にかもしれない。
割と蝉も暑がりだったり。
人間が暑いというように、蝉もミンミンと暑さに対する不満を漏らすのだ。
そんなわけない。
死ね死ねと鳴いてるわけもない。
彼らは、生きるために鳴いている。
哀れまないでほしい、蝉たちはどうやら一ヶ月は生きるようだから。
そして私は、アイスクリームが食べたいのだ。
空を見上げる。
雲を何十にも重ねた積乱雲が、遥か空に悠然とそびえ立っていた。
こりゃ一雨くるな。
汗を拭った。
汗。
汗なんて、この夏初めてかいたな。
不愉快だ。
アイスクリーム溶けてないかな。
ハーゲンダッツは高いんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!