死ね 死ね 死ね

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  この夏はひきこもりに徹していた私が、久しぶりに外出した。 ただ近所のコンビニへ行っただけだが。 アイスクリームが食べたくなり、五百円玉を握りしめてコンビニへ。 奮発して買ったチョコレート味のハーゲンダッツが入ったビニール袋をぶら下げて帰る。 子ども達が無邪気に遊ぶ(馬鹿じゃなかろうか、こんなクソ暑い日に)公園の側を歩いていると蝉がやかましい。 ミンミンだかジィジィだか、そんな鳴き声で雌が誘惑できるのか。 もしかしたら、人間の聴域では聞き取れない高い音で、美しい鳴き声を響かせているかもしれない。 いないかもしれない。 公園に一定距離で植えてある七本の木の内、一本を眺めた。 鼓膜が破れそうなくらい(誇大表現しすぎだろうか)鳴いている蝉はいるはずなのに、奴らはなかなか上手く隠れるのだ。 私の目が悪いだけなのか。 いや、次に見た木の幹には、五・六匹止まっていた。 ただ単にさっきの木の樹液が不味かっただけらしい。 ミンミン、ジィジィ、シワシワ。 アブラ蝉、ミンミン蝉、クマ蝉。 もちろん、どの蝉がどんな鳴き声しているかなんて聞き取れない。 聞いているとだんだん、セミセミセミと鳴いているように思えた。 そういや弟が「死ね死ね」って鳴いてるようにも聞こえるぜ、と言っていた。 死ね死ね死ィね。 なるほど、聞こえないこともない。 誰に死ねって言ってるんだろう。 今、君ら蝉の仲間を虫取り網で捕らえている人間の子供にかな。 それとも、太陽にかもしれない。 割と蝉も暑がりだったり。 人間が暑いというように、蝉もミンミンと暑さに対する不満を漏らすのだ。 そんなわけない。 死ね死ねと鳴いてるわけもない。 彼らは、生きるために鳴いている。 哀れまないでほしい、蝉たちはどうやら一ヶ月は生きるようだから。 そして私は、アイスクリームが食べたいのだ。 空を見上げる。 雲を何十にも重ねた積乱雲が、遥か空に悠然とそびえ立っていた。 こりゃ一雨くるな。 汗を拭った。 汗。 汗なんて、この夏初めてかいたな。 不愉快だ。 アイスクリーム溶けてないかな。 ハーゲンダッツは高いんだよ。  
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