family

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  こんにちは。 今から? 私は今、家族のもとへ行こうとしているんです。 強いて言うなら、逝こうとしています。 何故かって? 簡単です。 ちょっとテレビをつけてみてください。 違います、そんな下らないバラエティー番組ではない。 ニュースです、ニュースを見て下さい。 そう、『住吉一家惨殺事件』。 あれね、被害者、私の家族なんですよ。 私ですか? 私は大丈夫だったんですよ、被害者の中に『長女』は無いでしょう? 可哀想なのは家族です。 弟は私立の、良い高校へ入学することが決まっていました。 可愛い彼女もいたみたいですね。 母は久しぶりに父と二人きりで、初めての海外旅行へ行くと喜んでいました。 父は、最近昇進したばかりでした。 ――かわいそうに、だったら、犯人が憎いだろう? いいえ、私はむしろ、家族が憎かった。 私だけが辛い目にあっているのに、それでも幸せそうな両親と弟が憎くて仕方ありませんでした。 私が泣いている時に笑って、私が悩んでいる時に笑って、私が苦しんでいる時に笑って! ……しかしやはり、血まみれの凄惨な家族は、哀れでした。 哀れ、と言いますか、嘲りでしょうか。 ざまあみろ、と私は確かに思ったのです。 私を差し置いて幸せになるなんて。 許されるべきではないでしょう? 家族は、みんな、幸せにならないと。 喜びも怒りも哀しみも愛しさも分かちあわないといけない。 だから、私は家族を殺したんです。 私が、殺したんです。 首をめった刺しにしました。 私も、そうやって死のうと思います。 家族が感じた痛みを、私も分かちあわないといけません。 それが、家族だとは思いませんか?  
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