ポップコーン

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   夜中の十二時近くに、彼は帰ってくるなり言った。 「不味いポップコーンだった」  だいたい週に一度位の割合で聞く言葉だ。  不味いポップコーン、或いは、美味いポップコーンだった、と。  最初にそう聞いたのは、彼と共に映画のレイトショーを観に行った帰りの車の中で、その時のポップコーンは美味しかったらしい。 「なんでポップコーンの感想なんだよ。映画は」  と訪ねると、俺はポップコーン評論家なんだ、と返ってきた。 「映画の評価なんて恐れ多くて出来ない。せいぜいポップコーンだ」  知ってるか? 映画館で食べるポップコーンが一番美味いんだぜ。で、見る映画の良し悪しでポップコーンの味も決まる。わかるだろ? 面白くない映画のオトモのポップコーンが美味いか?  なるほど。自分は呟く。  不味いポップコーンとはすなわち、映画は面白くないと暗に言ってるんだと解釈した。 「はは、実際どうだろうな」  知るか。  
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