雑兵はかく語る。

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   衝撃を感じた後、後方へ吹っ飛ばされた。地面に叩きつけられ、倒れる。痛みは感じないが、うわああ、と悲鳴を上げる。これが仕事だからだ。  消えなかったところをみると、生き残れたな。頭上の赤いゲージを見た。もう四分の一程度しか体力がない。  勝ち目がないとわかりながら、立ち上がり、刀を構える。が、既にプレイヤーキャラはいなかった。恐らくは我らが大将のもとへ進んだのだろう。しかし、ここへ戻ってくる可能性もないとは言えない。  ふと隣を見やると、仲間が立ち上がろうと頑張っていた。ゲージに表示された体力はギリギリ。何も言わずに肩を貸してやる。何とか彼も刀を構えることが出来た。彼と目を合わせる。  我々も大変なものだな。と視線が語っていた。全くだ。しかし苦にはならないのもまた事実。  ――ああ、不幸なことにまたプレイヤーキャラが戻ってきた。  取り忘れたアイテムでもあったのか、あるいはただの経験値稼ぎなのか。  何でもいい。  さあ、突撃。  無論、自分が相手を倒せる筈など無い。しかし、刃向かわなければならないのだ。それが我々の存在理由であり、唯一出来ること。  重傷の仲間も向かって行った。そして切られて消えていった。  これが全てだ。我らの全てだ。  次は自分の番だ、と思う前に己も消えていた。  
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