死臭

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   草をむしる。公園。近所の子供と親。話し声。むしる。地区の活動でなければこんなことはしない。むしる。  『普段使う公園を綺麗にしよう。雑草を苅ろう』  友達の○○君も行くから。最後にはジュースが貰える。去年参加しなかったし。  そんな半端ならくるな。  雑草も生きているとは考えないのだろうか。人間さまは、色付きの綺麗な花には名前をつける。そこら辺の草には雑草という呼び名。  花は美しい。雑草は苅れ。  勝手すぎると思う。例えば花屋で薔薇を売るのと、雑草を引き抜くのとでは、何が違うんだ。草をむしる。  青臭い臭いがする。草の命の臭いだ。死んだ草の臭いだ。手にこびりついて離れないその臭い。  所詮自分も人間さまなんだ。  ジュースを貰い、蓋を開けて飲む。爽やかな味で忘れるのだ。流し込んでしまえ。  所詮自分も人間さまなんだ。  人間さまはジュースを飲む。  
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