5人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
我が校の吹奏楽部の部員が奏でるラッパは世界を終末に導かない。
果たして、そうだろうか。
「なぁにそれ。ラッパって」
なんとか聖書だよ、と曖昧に伝える。
七人の天使が七つのラッパを鳴らすと、世界が終わるんだ、と。
「聖書ねぇ。君、キリスト教か何か?」
軽く首を横に振り否定する。
否を掲げるのは大好きだ。
「違うさ、ただの無駄知識」
最近流行りのとるに足らない雑学。
夕暮れを映す窓を覗くと、外で吹奏楽部員が一所懸命に、あるいは適当に手を抜いて練習をしていた。
一番窓に近いところで、六人がラッパを吹いている。
惜しい、リーチ。
別に世界が滅んでほしいわけじゃないけど。
「みんな頑張ってるけど、君はしないの」
ラッパの練習。
指を指した方向を見ると、確かに自分は金色に輝くその楽器を持っていた。
やあ我こそが七人目。
マウスピースに口が触れた。
外の六人にあわせて息を吹く。
七人が七つのラッパを鳴らした。
世界の終わりですよ。
最初のコメントを投稿しよう!