鳴らせ、滅ぼせ

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  我が校の吹奏楽部の部員が奏でるラッパは世界を終末に導かない。 果たして、そうだろうか。 「なぁにそれ。ラッパって」 なんとか聖書だよ、と曖昧に伝える。 七人の天使が七つのラッパを鳴らすと、世界が終わるんだ、と。 「聖書ねぇ。君、キリスト教か何か?」 軽く首を横に振り否定する。 否を掲げるのは大好きだ。 「違うさ、ただの無駄知識」 最近流行りのとるに足らない雑学。 夕暮れを映す窓を覗くと、外で吹奏楽部員が一所懸命に、あるいは適当に手を抜いて練習をしていた。 一番窓に近いところで、六人がラッパを吹いている。 惜しい、リーチ。 別に世界が滅んでほしいわけじゃないけど。 「みんな頑張ってるけど、君はしないの」 ラッパの練習。 指を指した方向を見ると、確かに自分は金色に輝くその楽器を持っていた。 やあ我こそが七人目。 マウスピースに口が触れた。 外の六人にあわせて息を吹く。 七人が七つのラッパを鳴らした。 世界の終わりですよ。  
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