16回目の春

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母さんの機嫌は一瞬で絶好調になった。 絶好調な母さんの隣りに僕は腰をおろす。 「ねぇ~志季ちゃん」 「どうかした?」 「暇だから~シリトリタ~イム!」 「………へ?」 母さんは僕の気の抜けた返事を聞いたからか…右腕をグーで天井に突き付けて、いつも以上の笑顔のまま止まっている。 「……母さん?」 返事無し。 「もしも~し?」 又返事無し。 「お姉さ~~ん?」 「ぐすっ…志季ちゃんがグレた~~~」 そう言って母さんは又泣き出した。 しかも子供が泣くみたいに、両手を目元にもっていき、顔が少し上に向いていて、声をあげながら号泣。 (勘弁してくれ~~) 僕は又母さんの号泣を止める為に母さんに呼び掛ける。 (誰か…助けてくれ!) 僕は心の声で叫んだ。   薄暗い空間に一人の男が倒れている。 時々男の身体が細かく上下するので息はあるのだろう。 薄暗い空間…廃墟となった工場の壁一面にペンタグラムが現れた。 ペンタグラムからは数人の人影が現れる。 「皆さん素早く片付けて不生研に戻りましょう。こんな薄汚い場所には一秒たりとも居たくありません」 機体が話をしているかの様な声が廃墟の一室に響く。 「あと、そのコアはまだ生きていますので…」
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