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「お…お兄ちゃぁ~~~~~ん!!」
耳には妹の叫び声が…
しかし僕は妹を見つけられなかった。
目の前が…真っ赤だったからだ。
(何故だろう…)
視界全体が赤い。
仕方ないので身体を動かしてみる。
(………っ!)
しかし動かない。
(呼んでいるのに…)
僕は必死に手や足を動かそうとする。
(う…動けっ!)
痛いだけで動く事は無かった。
-ぬるっ…
右手にドロドロとした液体の感触を感じる。
(……?)
それは…
多分…
血…
だった。
「やだょぉ…お兄ちゃん…やだょ…死んじゃ嫌ぁぁぁぁっ!」
-がばっ!
「ゆ…夢か…」
僕は勢いよくベッドから起きた。
「又…あの夢か…」
この夢が初めてではない。
あの事故以来見続けている。
まるで何かを訴えているかのように…
この夢を見る。
しかし…
この夢は現実に起きた事だ…
この雪空 志季(ユキゾラ シキ)に…
自分自身に起きた…
生きている事自体が奇跡と呼ばれる程の…
交通事故だった。
僕は目の前の壁に掛かっている時計を見る。
時刻は4時。
母はもう起きているだろうか…
妹はぐっすりと寝ているだろうか…
そんな事を考えていると…
-かちゃ
ドアの開く音がした。
「じ~…」
少し開いたドアの隙間からは妹の瞳が見えた。
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