16回目の春

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「お…お兄ちゃぁ~~~~~ん!!」 耳には妹の叫び声が… しかし僕は妹を見つけられなかった。 目の前が…真っ赤だったからだ。 (何故だろう…) 視界全体が赤い。 仕方ないので身体を動かしてみる。 (………っ!) しかし動かない。 (呼んでいるのに…) 僕は必死に手や足を動かそうとする。 (う…動けっ!) 痛いだけで動く事は無かった。 -ぬるっ… 右手にドロドロとした液体の感触を感じる。 (……?) それは… 多分… 血… だった。 「やだょぉ…お兄ちゃん…やだょ…死んじゃ嫌ぁぁぁぁっ!」 -がばっ! 「ゆ…夢か…」 僕は勢いよくベッドから起きた。 「又…あの夢か…」 この夢が初めてではない。 あの事故以来見続けている。 まるで何かを訴えているかのように… この夢を見る。 しかし… この夢は現実に起きた事だ… この雪空 志季(ユキゾラ シキ)に… 自分自身に起きた… 生きている事自体が奇跡と呼ばれる程の… 交通事故だった。 僕は目の前の壁に掛かっている時計を見る。 時刻は4時。 母はもう起きているだろうか… 妹はぐっすりと寝ているだろうか… そんな事を考えていると… -かちゃ ドアの開く音がした。 「じ~…」 少し開いたドアの隙間からは妹の瞳が見えた。
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