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「びぃえぇぇぇっ」
「よしよし、泣くなっなっ!泣くなよ~」
「びっ、びぃえぇぇぇっん」
母さんは両手を目に当てて泣いている。
他人が見ると子供が泣いている様にしか見えない外見だが…
周囲の視線が痛い…
「泣くなよ~なっ!何でもしてやるから~泣くなよ~」
「びぃえぇぇ…えっ?な…何でも?」
母さんは目元に滴を溜めながら上目使いで聞いてくる。
「うっ……」
(しまった!母さんに何でもなんて言ったら…)
「う、嘘な…の?…ぐすん」
母さんはまた泣きそうだ。
(ここは腹をくくるしかない)
僕は一呼吸して冷静さを戻す。
「な、何でもしてやるから。泣くな。なっ?悪かったよ」
後戻りは出来ない一言を口に出した。
「何でも?約束だよ…絶対だよ…忘れたら…ママ家出してやる~」
「わかったわかった悪かったよ。何でもするから速くスーパーに行こうよ…」
「うんっ!」
母さんは笑顔で元気よく答えた。
さっきの事が嘘の様に…
『一番線に電車がまいります。白い白線より内側に…』
というアナウンスが流れて僕達が乗る電車がやってくる。
「志季ちゃんこれに乗るよ~」
「…おう」
僕と母さんは電車に乗り込んだ。
車内は夫婦や家族連れが多く、みな新オープンのスーパーに行くのであろう。
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