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『……坊ちゃん、もうバレバレですよ…』
なつかしい声が頭の中に響く感じがした。
ジューダス…リオンも諦めたように立ち上がりウッドロウの手からシャルティエを奪い返す。
「いつから気づいていた」
途端冷たく変わる声にウッドロウは苦笑する
「最初からなんとなく気づいていたよ。正体を隠すならそんな仮面では駄目だな」
「フィリアは気づかなかった」
決して視線をあわせずに淡々と答えるその姿はどこか強がっているかのように見える。
「何故…君がここに…?」
リオンの肩を掴み問う。
一瞬戸惑いを見せたものの、リオンは今までの経緯を大雑把に話した。
「エルレインが…か…」
「もういいだろう。僕は戻るぞ」
手を放した隙にリオンは再び踵を返すと出口に向かって歩き出した。
その華奢な背中に苦笑し声をかける
「もう行くのかい?」
その言葉に一瞬振り向く
18年振りの再会
しかも裏切った仲間との
ウッドロウはどう思っているのだろうか…
それでもそんな事を聞けるはずがない。
「大体兵士を使ってご丁寧に僕だけを呼び出しなんてすればカイル達が怪しむだろう…」
だからもう戻ると簡潔に告げ、再び歩き出す
「リオン君」
歩き出すと呼び止められ、それでもわざわざ振り向き話を聞こうとする行動から…リオンがなんらかの言葉を待っているようにしか思えずに
「18年…待っていたよ」
「…待っていた…?」
怪訝そうに聞き返すとウッドロウは頷き言葉を続けた
「君を失った事をずっと悔やんでいた…どうしてあの時守ってやらなかったのだろう…と。どうしてどんな事になろうともあの水流の中で君の腕を掴まなかったのだろう…と」
「…意味がよくわからないな…。僕は勝手に貴様らを裏切った。何故守るだなんて…」
困惑したように俯くリオンに近づき、そっと頬に手を添えた。
少し体温の低い頬
18年前となんら変わらない。
「わからないか?」
「理解できない」
返事を返したリオンにフっと柔らかく微笑み、ウッドロウは顔を覆う仮面を器用に取る。
「…な!」
焦って仮面を支えようとするが両手を掴まれ、カランと音を立て、仮面は足元へと転がった。
「今は誰もいない。良いだろう?」
その顔は幼さの残る美しい顔
18年前、そのままの姿だった
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