160人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうして?兄さん…」
涙を流しながら身体を震わせ目の前の女の死体に力が抜けたように座り込む弟を何も考えずただ無表情に見つめる。
「なんで…この子を…殺し…たの…?」
既に真っ白になった女性の体は先ほど弟に血を全部飲ませたため。
夕飯、弟にこの女の血を飲ませたら吐き気を伴い、理由を問われ女の死体を見せた。
そして今に至る…
「この人は…僕の…同級生で…」
「友達…だろう?」
そう、この女は最近弟に親しく接してきていた。
「初めての…友達…だったのに…」
止まらない涙…それがこの女のためだと思うと…
虫酸が走る。
「アシュリー、よく聞くんだ。」
「なに…?」
いまだ涙を流し俺を見るアシュリーに優しく微笑んでやるとアシュリーに目線を合わせるように腰を下ろし膝を立て、アシュリーの肩に手を置く。
「この女は、お前を裏切ろうとしていたんだ。」
「え…?」
「お前が吸血鬼だってことを村人に言おうとしていた。」
「う…そ…」
動揺して目を左右に揺らす弟に見えないように口端をつり上げる。
かかった…
更に弟を落とすため困った表情をする。
「兄の言うことが信じられないか?俺はお前に嘘をついたことがあるか?」
「ないよ…。兄さんは僕に嘘なんてつかない。ごめんなさい。」
「謝らなくていい。」
申し訳ないと眉を下げるアシュリーの頭を優しく撫でてやる。
アシュリーは俺の言うことを疑いはしない。
アシュリーは優しいから人を疑うという部分が欠けているからでもあるが、俺のときは誰よりも安心して俺の言うことを信じている。
俺はずるいから…
それを知っているから…
アシュリーをこうやって度々騙している…
最初のコメントを投稿しよう!