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ヤバイぞ。
アイツが口をあんぐり開けて待ってるぞ。
油断すると持ってかれるぞ。全部持ってかれるぞ。
なぜならアイツは捕食者なのだから。
恐怖に立ちすくみながらもなお…自ら傷口を掻きむしり、臭いを撒き散らす。
ヤツは腐った血の臭いが大好きなのだ。
やはり人は一人では生きていけない気がする。少なくとも自分はそう思う。
あぁ…。油断した。
ここは暗いな…とても真っ暗だ。
俺は今、アイツがあんぐり開けていた口の中。
俺にとっての幸福は、はたして何なのか。
暗闇をズルズルと落ちていく。
ゆっくり確実にミリ単位で落ちていく。
一秒ごとにどんどん離れていく落ちていく帰れなくなっていく。
何かを決断する為にはそれ相応の覚悟が必要だ。
基本的かつ難解な理。
そこから逃げる術などないのだろう?
だからこうやって運転中に電子ノイズの叫びを聴きながら、ふと…あの化け物が全てを破壊しないだろうかと…。
陳腐で稚拙なアイツに飲み込まれてしまったこの俺ごと破壊しないものだろうかと。
木っ端微塵に跡形もなく破壊してくれないものだろうかと。
とにかく疲れているんだ。
早く眠らせてくれ。
ただ一つ欲をいうならば。
眠りに落ちる間だけでいい。
見届けてくれないだろうか。
こうやって眠りに着くまで文章を作っていると、ドアを開けて化け物が入って来る。
背骨が曲がったイビツな造形で肩の位置も崩れている。足や腕の長さもてんでばらばら。
化け者はよたよたと不器用に歩きながら寝ている俺を捜しているのだろう。化け物には頭がないから俺を見つける事ができないのだ愚かなやつめ。
あぁ…。
これは壁の模様ではないか。
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