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―――――男が目を醒ました時…
初めに見えたのは何だったのだろう。
………何か分からないのだ。
確かに、嫌がる瞼を無理矢理開き、それをしかと観察したのだ。
その色は黒く、形は円く、真ん中がぽっかりと空いているのは分かった。
ぽっかり空いた穴の中は、真っ暗で何も見えないのも分かる。
だが、生き物なのか何なのかさえ、皆目見当が付かなかった。
さっきから眺めてはいるのだが、それが動く気配はこれっぽっちも無い。
「………ん…むぅ…?」
理解できない光景に、男は首をかしげて唸り声をあげた。
「……………あっ」
何の事はない。
視点さえ変えれば、おのずとその全体像が掴めたのだ。
―――それは、拳銃だった。
その拳銃が、自分の眉間のすぐ傍らに据えられていた。
長い銃身をたどると、丸っこいレンコンの様な物がついている。
恐らく、それが「弾倉」と言う物なのだろう。
それは間近で観ると、なんとも恐ろしく…
そして震えるほど魅力的だった。
男はその妖しい美しさにすっかり見とれ、回りを見ずにいた。
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