春の終局

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 九尾の狐と別れた芭蕉は、曾良を起こして基角の父が居る宿へ戻った。  基角の父は顔色を悪くして布団に寝ていたのだが、起き上がると見る見る内に回復していき、まるで嘘の様に元気になっていった。 「基角とあの妖怪は、居ないのだな」  基角の父は悟った様に芭蕉と曾良へ切り出した。曾良はまだ芭蕉から詳しく聞いていなかったので、充分受け答え出来なかったが。  しかし、基角の父に答えは要らなかった。もう、解っていたのだから。 「夢に出てきたのだよ」  どうやら、寝込んでいる時に九尾の狐と基角に出会ったらしい。  基角の父は、その時に教えられた《この空間の出口》目指し芭蕉と曾良を引いて歩いた。  基角の父は、普通の道と何ら変わり無い出口にて、息子の面影がある桜の様な笑顔を見せた。 「では、達者で」  御元気で。達者で。芭蕉はこの言葉達に多くの力を貰ったが、この後に起きる災いを感じられずにはいられなかった。
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