来客

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誠は愛につかみかかった。いや、つかみかかろうとしたが、 その時! シュッ かすかに風をきる音がして、誠の目の前を何かが横切った。 「うわっ!あぶねえ」 誠は、とっさにのけぞり、ついで態勢を立て直すと、 「おい!危ねえじゃねえか」 と、怒鳴った。「いつから来てやがったんだ?」 誠の視線は、風を切って目の前を横切ったモノの正体を確認し、それから反対方向へとうごいた。 「…いつから…。そうね。最初から、とでもお答えしておこうかしら」 全身黒ずくめの服装であらわれたのは、 かつて、 「悪の花園」 と呼ばれた花園実業高校において、 「影の大番長」 と恐れられた、高原由紀、いや、蔵王権太と結婚して苗字を変えた、蔵王由紀であった。
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