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「どうして雨は降るんだろう。」
「それはね、人が流せない分の涙を空が吸収して、その人の代わりに涙を流しているからよ。」
そう言ったのは、後ろから近付いて来たスラッと足の長い少女。見た目的には少年よりも年上と思われるので17、8才といった所だろうか。
その少女は綺麗な藍色のジーンズ真っ白なノースリーブの上に黄色い厚手ねジャケットを羽織っている。こちらはよくある運動靴で、やはり踝の所には青白く濁ったガラス玉が埋め込まれていた。髪はロングストレートの艶のある黒。瞳は誰もが美しいと言う様な透き通ったエナメルグリーン。
「その話は何度も聞いた。」
仏頂面で返事をした少年は溜め息を付きながら地面を見下ろす。その言葉を聞いた少女は少し怒り気味で言った。
「ルイスが何度も同じ事言ってるからでしょ。」
「そうだっけ?そんなつもりは無いけど?…それよりジャス、あっち。」
そう言って少年が指差した方向には荷馬車が一台。その脇で、小太りな中年の男性が此方に向かって手招きしている。
「ぁ、はーい。」
そう言って少女は男性の所へ慌てて駆けて行った。
その途中で少女は少年に向かって言った。
「ほら、ルイスも早く早く!」その言葉を聞いた少年はヤレヤレと言うような仕草をし、少女を追い掛ける様に走り出した。
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