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「戻ってきたぞ」
「殺したのか?」
「愚かな……花嫁を連れ去ろうなどと、下らぬ事を考えるからよ」
元の部屋に戻ってきた3名に対し、口々に囁き合う会話は雑音となっていた
「はい、はーい。お静かにネー」
その場を収集しながら両手を鳴らし、抱えていた繭海の体を無造作に放り出した。繭海は、まだ意識が戻らないようだ
ドサッ
「!! マユミくん!」
慌てて駆け寄り、繭海の体をぞんざいに扱ったパオルを睨み据えた
「ヒドイわ!こんなことっ!マユミくんが何をしたって言うの?!」
抗議しながら怒りを露にする螢に、悪びれる様子もなくニヤリと笑って口を開く
クス…
「なら、助けてあげなよ。簡単に治すことも出来るんだよ」
パオルの意外なセリフに螢は面食らう
「治せ…る……?」
「あぁ」
キッパリ頷き「あっと言う間♪」と、続ける
「僕らの錬術を使えばちょろいもんさ♪……ただし条件がある」
そう言って取引を持ちかける
同じ目の高さになるようにパオルも膝を折り、螢の顔を覗き込む
「条件?」
嫌な予感はしていた
繭海の手を握りながら話しを聞く
「そうだよ。僕らは、暗黒を司る王子を補助する役目とその要を産むことのできる適合者『花嫁』を捜している。そして君は候補者の一人に選ばれた。
それも、特別わざわざ喚び寄せた有力人物。
おとなしく僕等に従ってくれ。そしたら君も彼も悪いようにはしないよ、約束する」
「……本当に?」
半信半疑な気持ちだったが、繭海の状態を傍らにして決断は一つしかない
けれど迷っている自分がいる
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