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花嫁を……
この世界で見い出せぬのなら、喚び寄せれば良いのだ
救世主は我らと、あのお方の前に現れる
……―――我ら 暗黒の花嫁よ
「おはよー、ホタルちゃん!」
隣人同士で家族包みに仲が良いこともあり、その子供たちも幼馴染みという間柄、本当に仲が良かった
『香角 螢(カズノ ホタル)』に声を掛け、近寄ってくる『天堂 繭海(テンドウ マユミ)』
お互い9才の小学3年生
「おはよ!マユミくん、一緒に学校行こ♪」
愛らしい笑顔で振り返った螢の持つ赤い傘に、傍までやって来た繭海は目を見張る
「傘?雨降るってテレビで言ってた?」
不思議そうに尋ねると、螢はクスクス笑う
「お母さんも要らないって言ってたんだけど、降るような気がしたから持ってきちゃった!」
螢は、傘を軽く挙げながらはにかむ様に微笑む
確かに空にはチラホラ雲が覗いていたが、良い天気で青空が広がっている。雨など降りそうにない
けれど繭海は螢の意見に素直に納得し、ニコリと微笑む
「ホタルちゃんが言うならきっと降ってくるね。そしたら僕のこと、帰りに入れてってくれる?」
螢は昔から勘が良く、かなりの確率で当たることを繭海は理解していた
「もちろんいいよ。一緒に帰ろうね!絶対だよー♪」
螢は無邪気に笑って頷いた
“見付けたぞ……暗黒に魅入られし選ばれた娘。
花嫁よ……―――”
「うん!ありがと、ホタルちゃ… ッ?!」
次の瞬間、繭海の様子が一変した。驚愕に目を見開いて凍りつく表情を間の当たりにし、今度は螢の方が首を傾げる
「どうかした?」と視線を追った
「ッ!?……」
そこに在ったのは渦巻く暗煙。有り得ないような空間の渦
混乱を示す2人の前で、それはどんどん広がり、とうとう道いっぱいに塀と塀の間で壁となってしまう
「!?」
何かを感じて、螢から血の気が引いてゆく。ワケも分からずにゆっくりと首を左右に振りながら後退り、繭海を呼んだ
「マ、マユミ、くん……行こ……
早くっ!!」
繭海も我に返り、螢を見てその表情が尋常じゃない位に脅えている様子に、目の前にある現実が幻でない事を自覚する
息を飲み込んでから後ろを振り返るが、この時間、いつもならばあるはずの存在が、今日はまだ無い事に今更気が付いた
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