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繭海がシャオラスの家で目を覚ましたのは、ソレから八日もしてからだった
「生きてる…?」
見慣れぬ天井と謂われもない気分の悪さに、困惑しながら頭だけを動かし周りを確かめる
(ドコだろ、ここ)
木製の棚には薬品が並び、タンスの上には使われていない花瓶が幾つか置いてある
部屋内は僅かに苦い香りが漂っていた
「あー…起きないほうが良いよ。体、起こした途端に胃液戻すからね」
そこに軽快な女性の声が響き、驚いて顔を向けると何やらシーツの山になった籠を片手に抱え繭海を覗き込んでいた
30代そこそこの気の強そうな女性で陽に焼けた肌を比較的露出している
無造作に、繭海の額に手を伸ばしてくるとニッと歯を見せて笑った
「熱は下がったみたいだね。顔色も悪くない…大丈夫かい?」
「‥‥‥」
尋ねられても、当の本人は茫然としたままシャオラスの一挙一動を見つめているだけで、質問に答えられるまでの思考には至らず
しかし、した方も答えは期待していなかったのか、気にした風もなく籠を床へ置き、横の椅子に腰を下ろす
改めて見ると女性だというのに、肌には所々目立たぬ古傷が無数にあり、一見美人な彼女からは意外であって驚いた
その視線にシャオラスは笑みを浮かべ(女にしては)逞しい二の腕を突き出し「どうだい?」と自慢気に語る
「勇ましいだろ?こん位じゃなきゃ良い女はやってけないのさ♪
ところで声は出るね?言葉は通じている様だから話をしよう」
「ボク……生きているんですね?」
未だ、心ここに在らずな様子で確認されて、シャオラスは大きな溜め息をつく
「地獄じゃない事は確かだね」と呟き繭海の固定された右腕の点滴を外す
「死体を拾った覚えはないよ。長い間寝っぱなしだったからあまり変わらんけどね。
コレは栄養剤、飲まず食わずじゃ死んじまうからね」
慣れた手つきで片付けて改めて居直す
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