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繭海はしばらく考えた末に意を決して話し始める
「……ボクは、拐われてきたんです」
分かる事だけを淡々と
シャオラスは眉を潜める
「拐われてきただと?アンタだけ?」
「いいえ。友達が……女の子が1人」
「ほぅ?ンで、その子はどうした?」
「ッ」
繭海は一気に強張り、シーツを握った
その反応に気が付いたが、敢えて無視し加える
「どうやら未だに捕まってるか……あるいは、既に殺されたか」
「ホタルは生きてます!!…っ …ってぇ…」
すかさず反論し、勢い余ったのか傷に障って体を丸めると、「バカだねぇ」と呆れた声がした
「本気で言っちゃいない。あくまで可能性を述べただけ。一々反応すんじゃないよ、可笑しな奴だ。だからガキってのは……
しかし囚われている、か……(空から繭海が降ってきた。あのケガからして、棄てられたと考え……用があったのはアッチのガキ。やはり拐った奴らの正体、考えられるのは……―――)お前を拐った奴らの事を知りたい。何を話していたのか状況を逐一教えな」
「え… えっと、あの……け、警察に言ってくれるんですか?」
「はぁ?ケーサツ?……何だソレは。警兵の仲間か?」
あからさまに顔をしかめて首を傾げるシャオラスに繭海も狼狽える
「け、ケイヘー?って?」
「‥‥‥ はぁぁ」
シャオラスは繭海の反応にうんざりと溜め息を吐いて額を抱えた
「もういい、話を戻す。
単語でも良いから言ってみな」
「ボクたちは空飛ぶフネの中で目を覚ましました。レン術って言う力で飛んでいて。そこにはキレイな格好をした人が沢山いて……それから、そこから見えた下の世界をムカイ……じゃなくてゼロ、ゼロ、アー…なんだっけ?」
オロオロして焦ってしまう。空回り気味だが確実な記憶力は年齢以上
「ゼロアース」
シャオラスは無表情で一言
繭海は弾けた様に顔を上げた
「! そうッ、ソレです!そしてゼロアニズだ……ソレをあの人たちは、そう呼ぶって」
「『あの人たち』?それは……」
シャオラスの声も表情も冷ややかだ
それに促される様に繭海も静かに続けた
「ラヴァースとラヴァーシアン」
(やはり……)
シャオラスは確信を得、内心呟いて僅かに目を細め、窓際に立つ
その行動を戸惑いながら見守る繭海
「……あの?」
「ラヴァースとは迷宮の事、そしてラヴァーシアン、迷宮人の事」
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