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‥‥
繭海がまともにベッドから起き上がって体を自由に動かせるようになるまでに更に二週間を要した
その間、繭海はシャオラスの私生活を色々知った
とにかく彼女は大雑把で豪快。細かい事は気にしないと豪語するだけあって、小さなミスを誤魔化し平気で落ちた物さえ口にする
だが一番驚いたのは、彼女が恐ろしく武道に長けていた事
この土地が人里離れた山の中にあることは、すぐに把握した。ソレによって獣に襲われる確率も高かった
それでも無事だったのは……
ドオォォ ンっ
「‥‥‥」
「フンッ 私にかかって来るなんて身の程を知りな、畜生共が」
鼻を鳴らし胸をドーンと張り、埃を払うように手ばたきしながら吐き捨てる
見下す様な視線は、今しがた投げ飛ばされた相手に向けられた
彼女の三倍はあろう巨体の熊と虎を混ぜて割ったような、恐ろしく爪と牙がバカデカイ獣がのびていた
「凄いですね」
呆れた顔でただ感嘆するばかり
何度見ても、素直にこの一言に尽きる
「今日の食事は異飽きないねぇ!」
満足そうなシャオラスの横で苦笑いする繭海がいる
‥‥と言うのも、襲われるのは日常茶飯事で1日に2・3度は当たり前、今日に至っては既に4度目だった
けれどシャオラスはこの調子で乗り切ってしまったのだ。
その細腕に隠されている筋力は、見事であるとしか例えようがない
(肉料理ばかりですけどね…)
そんな具合だ
料理は大抵、肉(種類だけは豊富)焼きが中心で野菜や手の込んだ料理は一切なし
最初は、胃が耐えられずに凭れて、数度にわたり吐き続けた。その度にシャオラスに「軟弱だ」と吐き捨てられた
さすがに日が益すごとに馴れてきたのか、何とか順応出来始めたが、これでは…
子供ながらに痛感したのか、見よう見真似で調理室に立った
皿洗いや片付けなら家の手伝いでした事があるが、料理となると話は別だ
(皮剥き器も計量スプーンも無い。けど何とかなる!…多分)
調味料らしき物を加えながら慣れない手つきで火や刃物を使って、てんやわんやで約二時間
皿の上の出来上がったモノは、お世辞にも美味そうには見えない得体の知れない物体の数々が盛ってある
「‥‥‥」
作った本人すら言葉が見つからない。
無言状態で運ばれてきた物を目の前に並べられたシャオラスの反応は…
「旨いじゃないか!」
返ってきた意外なセリフ
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