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「はぁ?なんだってぇ?」
朝からシャオラスの素っ頓狂な声が外まで響いた
繭海は戸惑いながら頷いて、常々思っていた事を告げていく
「…だから僕は螢を助ける為の強さが欲しいんです、錬術を覚えたい。誰かの為じゃない、彼女の為に」
真っ直ぐ向けられた意志の強い瞳に、シャオラスはテーブルに肘を突いたまま鼻で笑う
「ほぅ?立派なもんだ、かっこいいよ。さすが男だ」
明らかに棒読み
わざとらしい感嘆を洩らして笑みを浮かべ立ち上がり、繭海の前に立つ
見上げ、見下ろす形となる二人の間に流れる異様な空気に、繭海は緊張して唾を呑み込んだ
「‥‥‥」
「…と、言いたいところだがね……」
「?!」
シャオラスの雰囲気が変わったと思った時には遅かった
ドゴッ
「はッ……ぐぅっ…っっ」
眩暈を起こさんばかりの衝撃と腹の圧迫感、激痛に吐き気が込み上げる
真っ白になった
「かはっ……ハ ッ あ… 」
体をクの字に曲げて、のたうち回るその先で、シャオラスの冷たい視線が待つ
「馬鹿言ってんじゃないよ。基本も知らないで強くなりたいだぁ?甘ったれんな!相手(敵)はあのラビリシアンだよ?半端な錬術を覚えたところで瞬殺されるのがオチさ。
愚かな奴だねホントに……ここで断言してやるよ。アンタは錬術に辿り着く前に死ぬ。この森の獣か……私に殺されてね」
冷め切った瞳
脅しなどではない、彼女は本気だった
「ハァ ハァ ハァ…」
「やめときな。私でその様じゃ、ラビリシアンどころかラビリンスにさえ踏み込めないよ。
その子は気の毒だが諦めて忘れるんだね」
哀れむ表情を向けたシャオラスに繭海はすかさずソレを遮った
「イヤだ!!」
かすれた声だがハッキリした想い
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