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「でき、ませんっ ハァ ホタルを ッ…忘れるなんて……ハッ つ……でき、ないッ!ハァ ハァ…
約、束しま…した ハッ…必ず、迎えに……いく、って…ハァ だか、ら…待ってて…って」
弱りきった体を起こし、力の入らない膝でかろうじて立つ事ができた
しかしその瞳は先程と変わらない強い光を秘めたまま曇りない
正直シャオラスは感心していた
(なんの訓練も受けた事の無い人間にしては、面白い奴だね)
その表情は行動とは裏腹な含み笑い
これは気まぐれ
「強くなりたいか?」
「はい」
繭海は即答した
まるでシャオラスにされた事など忘れてしまったかの様に
気持ちは一途に…
「今のアンタじゃその辺の盗賊すらあしらえないだろうね」
「‥‥‥」
紛れもない真実に、反論はできなかった
「私は錬術を使えないと言っただろう?ダレに教わるつもりなんだい?」
「捜します。手がかりを見つけてラヴァーシアンに匹敵できる人物を!」
根拠の無い事だと判ってないわけじゃない。それしか方法が思いつかなかったのが現実だろう
「どうやって?地道にやるかい? はんっ…そりゃ気の長い話だね、ご苦労なこった。何十年待たせる気だ?その頃には恋しい彼女も他人の物になってるよ。
何と言っても錬術の修得に素質が無い者なら30年はかかるんだ」
「厳しいねぇ」と嘲笑を洩らしたシャオラスの台詞は繭海に重くのしかかった
悔しくて唇を噛む、それが何も知らない繭海(コドモ)ができる限界だった
暫く沈黙が流れ、シャオラスが先に口を開いた
「……私の知ってる錬導師を紹介してやるよ」
「え?!」
驚いて目を見張る繭海を尻目に、シャオラスは仕方ないといった様子で自分の茶を煎れる
「1人心当たりがある、年齢はいっているが腕は保障しよう。まだくたばっちゃいないと思う。名はタオレンといってね、案外名の知れてる人物だ。ずっと西に住んでいるとしか分からないが、恐らく適任だろう」
「どうして僕に?」
今までの経過からもシャオラスは繭海が錬術を覚える事を快く思ってなかったはずだ
なのにこの変わり様に繭海は戸惑いを見せた
むしろ、警戒(?!)
首を傾げていると彼女は微笑する
元は美人なので綺麗なのだが逆に今は怖い…
‥‥
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