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「マイマスターどうでしょう?この度揃えました花嫁候補達は?やはりあのパオルの花嫁が最も有力と思われますが……」
玉座に向かって伏礼する男は、返答が無くても淡々と語る
そこへ別の者が加わり、同じ様に膝を折る
「まだ子供であります故に四、五年は待たねばなるまい」
また別の者
「それほどの猶予、果たしてありますかな?」
敬礼を怠らないまま会話は身内のみで行われていた
「猶予も何も、王子が現れなければ同じ事……その為の花嫁だ」
「力のコントロールさえ成せれば、時間など要さなくとも自ずと分かるであろう。それにあの容姿だ、申し分ない」
「それもそうだな…いずれにせよ、決まらなければ進みはしないのだから」
話も一息着いた後、解散してから宮殿内の廊下にて先程参加していた者が並んで歩いていた
話題はやはり、先程の関連性のある事
「セフロティアスと言えば、あの方と共に召喚されてきた子供は死んだと思うか?」
繭海の事だ
「さぁな?何故そのような事を尋ねる?」
「お前だって見ただろう?落ちる寸前、あの小さな花嫁が使った力の矛先が、セフロティアスの子供に向けられていた事を。パオル殿も進言されていただろう?」
「あぁ、あの力は素晴らしかった……しかし仮に生きていたとしても、害にはなりますまい。マイマスターの言うとおり放っておきなされ」
あの日の事を思い出し、感嘆を洩らした後、繭海については興味無さ気であった
「いずれ、時が経てばあの方も忘れるでしょうに……
子供故に執着しますが、立ち直りも早い。だからこそパオル殿を付けているのでしょう」
パオルは余程の地位と信頼性を持っていた
が…?
相手の顔が曇る
「…そのパオル殿の話なのだが、妙な噂を耳にした」
言葉を濁す物言いに、眉を潜めて足を止めた
「?」
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