転機

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息をする事さえ煩わしそうに、流れ落ちる汗は拭う事さえしない 膝に手を付いて体を支え、腰を折る繭海は顔のみを上げた ハァ ハァ「も、もう休憩です、か?」 辿々しく、声にならない質問を投げ掛ける シャオラスは呆れた様に肩を竦め見下ろしてきた 「休みを入れると逆にツライかい?なら自主トレに切り替えな。 私ゃー休ませてもらうからね。アンタに付き合ってたら何時になっても茶が逃げちまうよ」 アッサリ突き放すと家の中に戻って行く 師を見送る事もなく、頭を下げて再び体を動かし始める繭海 師も師なら弟子も弟子 これが彼らの日常になっている 繭海の体は、全身傷と痣だらけになっていたが、平均の9歳の体躯に比べ、身長も筋肉の付き具合も群を抜く。 当時セフロティアより召喚されて来た時から背が10cm以上は伸び、大人びて逞しい表情をするようになっていた シャオラスは、繭海が事前に用意しておいた茶豆を煎りながら、窓から繭海の姿を映す (2ヶ月、たった2ヶ月でアレか……当初、私の計算ではこの経緯にたどり着くまでに、最低10ヶ月はかかると思ってたんだけどねー。素質は勿論だが、ずば抜けた集中力と精神力が為せる業だ。正直、頭が下がる…… しかし逆に危なっかしい……) カップに注いだ茶を口に含みながら僅かに顔をしかめた (恐ろしいガキだな。 掘り出しモンだが、このままじゃ、いずれは……) 「なぁ、アレ誰よ?」 「弟子……」 誰も居ないはずの家の中 突如、背後からの質問にシャオラスは振り返る事すらせずに、平然と即答する 相手は「つまらないと」呟いて、肩を竦めてみせる 「なんだよー、気付いてたワケ?驚かせたかったのに」 「やれやれ」と溜め息混じりに振り返るシャオラスの呆れ果てた視線の先に居たのは、180cmあるだろう長身と鍛え貫かれた体躯、黒髪碧眼の20代前半優男だった 愛想の良い顔を向けている 「アンタがこの森に侵った時からだよ。気配消しは相変わらずだね。馬鹿者!」 「うーわぁ、きっびしぃ!少しは遠慮しない?」 言う程、気にしてる風も無く、シャオラスのカップを奪って中味を飲み干す 「剣しか能が無いくせによく言うねー。 あの邪魔な剣はどうしたんだい?見当たらないじゃないか」 シャオラスの視線が青年の背中に向けられる 複雑そうに宙を仰いでからニカッと、いかにもわざとらしく笑って見せた 「‥‥‥」 嫌な予感…――
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