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……―――それは、こちらで言う一ヶ月ほど前まで遡る
螢と繭海は突然『ココ』にいた
「い、たぁ……?なん… ここ、ドコ……?」
目を覚ました繭海が最初に映したのは、戸惑いに目を見開いて周囲を呆然と見つめた螢の姿
「ホタルちゃん?」
ビクッ
螢は繭海の声に肩を跳ね上がらせて反応し、恐る恐るこちらを向いた
「マ、マユミくん、ここ……」
彼女の方が先に目覚めたが、現実離れの展開に混乱してしまい繭海を起こすに至らなかったらしい
「うん、ドコだろうね」
それに比べ、繭海はやけに冷静だった。立ち上がってグルリと辺りを見回す
先程まで居たはずの見慣れた登下校路ではない。
室内はやけに広すぎて天井にはいくつもの立派なシャンデリアが一列に連なり、壁は白く、太い柱沿いに動物らしき剥製が置かれていた。どれも図鑑で見た事の無いような動物ばかりで、二人は眉根を寄せた
(美術館?)
雰囲気はソレに近いが、どうにもおかしい
広すぎる。一瞬は部屋だと思っていた此処も、通路である事に気付いた繭海は、弾力のある赤い絨毯の上を歩き出した
その背中を螢は慌てて呼び止める
「まっ、待って!マユミくん!!」
繭海は螢を振り返り「行こう」と手を差し出して、通路の続く先を見る
「ココがドコかは判らないけど、この場所は『ドコ』かの廊下なんだよ。広すぎてすぐには判らなかった。この先にドアみたいなのが見えるよ?ダレか、居るかもしれない」
手を借りて立ち上がりながら螢は不安を見せる
「だって……人が居たら、それは私たちを誘拐したかもしれない人たちじゃないの?怖いよ、逃げよ?」
けれど、繭海は少し考えてから向かおうとしていた逆にある扉を見つめる
「どっちかには行かなきゃならないよ?どうする?」
責めているのではない、純粋に尋ねていた
(ホタルちゃんの勘に頼るのが一番信じられるし……)
「え……」
螢は困った様に表情を曇らせた
それを見て繭海も心情を察したのか苦笑を込める
「ごめんね、頼りなくて……僕も実は自信無いんだ。誰かに会うのは不安だよ。ケドね、誰もいないのはもっと不安なんだ。
逃げるにしても、がむしゃらに飛込んで死んじゃったら困るし?」
脅しでない正直な気持ち
螢は迷っていたが、チラッと繭海を伺いながらも先のドアへ指を差す
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