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俺が宿屋(ホテル)を見つけたのは既に日が暮れた頃だった。
なんだ?
ボーイが鬼の形相で近づいて来たけど……
ってかボーイとか笑顔でいるもんじゃないの?
「お客様! 棺桶の持ち込みは困ります!」
……はっきり言って異常だ。
このボーイ。体格が常軌を逸している。
俺もある程度体格には自信はあったが、それが陳腐に思えた。
与えられたであろう制服は、その巨躯を押さえ付けパンパンに膨れ上がり、力を込めれば一気に弾け飛びそうになっている。
そんな筋肉だるまと対峙し気圧されはしたものの、言われている事は正論。納得出来る。まるっきりゲームの感覚だった。
てかさ?
客に対してこの態度はクレームの原因になりかねないよ?
「……すいません。 じゃあこれ適当な場所に埋めといてくれますか」
先の思いは一瞬にして消え去る。
俺の中にあったクレーマーになる覚悟より、『一先ず“これ”を手放したい』と言う気持ちが勝った為だ。
俺は素直に棺桶を差し出す。
「かしこまりました」
一言返答し、ボーイが棺桶を受けとるのを確認すると、俺はその足で受け付けへと向かう。
「すいません部屋空いてますか?」
「お一人様ですか?」
間断なく質問に質問で返す受付嬢。笑顔はとても癒されるが……一名に決まってんだよなぁ。見てわかんないのかな?
「二名です!!!!」
その声は突如俺の背後から沸き上がった。
うおぁっ!?
いつの間にヒロシが!?
確認すると、そこには皮膚の腐敗や膿んだ箇所が完全に治ったヒロシが、とても良い笑顔で立っていた。
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