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Δ
「どう言う意味だ?」
俺は感情を押し殺して低く唸る。
それに対して鈴本はいたって普通に返した。
「言葉の通りや」
数秒だけ沈黙が続いたが、やがて鈴本はため息混じりに説明を続けてくれた。
「あんさんは三年前、確かにあいつらを倒してくれた。でも、生き残りがおったんや。そしてそいつ等が、創造者に報告したんやろうなぁ、“この土地は危険や”て。せやから、半年前まではやつらの被害はほぼゼロやったんやけど……最近になって急に動きはじめよった。それも、かなり派手に」
そこまで言うと、鈴本は急に空を仰いだ。
「ありゃりゃ、まだ説明の途中や言うのに」
そして俺の方に向き直り、笑った。
「でもま、論より証拠、ちゅうやっちゃな」
言い終えた瞬間に、俺と鈴本の周りに黒い物体が降ってきた。
アスファルトに小さなヒビが入る。
また、過去の光景が脳裏に浮かんだ。今度はより鮮明に。
「……っ!」
・・・・・
あいつらだ!!
・・・・・
瞬間的に2つの能力を発動!
その場からは動かずにあいつらを切り刻む。
切られたあいつらの肉は『いつものように』灰燼に帰して跡形もなく消えていった。
所要時間は一秒もない。
俺は大きく息を吐いて激情しそうになった自分に自制をかけた。
「おお、さっすが朔真くんや。六体もの“コーラス”を瞬殺とは。やっぱ、ウチの目に狂いはなかった」
余裕しゃくしゃくでそんなことをほざく鈴本の方に振り向いて、俺は驚いた。
まるで見ていたような口ぶりは、まさにその通りだった。
見ていたのだ。
なにもせず、ただ立ったままで。
「『連動力場』。それがウチの能力名や。相手に負力を与えて圧力みたいのモンをかけれるんや」
黒光りする体に歪な口以外に特徴のない顔、首を守るように生えている大量の羽毛や両手の手首から伸びる両刃の剣。
それらを持った見間違うはずもない“三年前の化け物”は、鈴本の周りで着地した態勢のままピクリとも動かなかった。
それらを指してひょうひょうと自分の能力を説明する鈴本には、さっきよりも底抜けに強さを感じられた。
……いや、今はそんなこと、どうでもいい。
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