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「さっき“コーラス”って言ったか、こいつらのこと。あんたはどこまで知ってんだ?」
俺は一歩を踏み出して鈴本に近づく。
もしものことを考えて警戒は怠らない。
「ちょい待ち、こいつら殺してからや」
言われて俺が足を止めると、鈴本は左手をスッと前に突き出して、一言。
「“断絶”」
バグッとゆう音を残してコーラスと言うらしいあいつらが一斉に灰へと変わった。
真っ二つになって。
「……すご」
「おおきに」
言うと、鈴本は笑ってそう返した。
だが、それもすぐに真剣な声色に戻る。
「あいつらの名称は“コーラス”って言うんや。コーラスは人を喰らって成長・進化する。個体によるんやけど、大概の好みは十~三十才ぐらいまで。そしてある程度成長・進化すると、独自の能力を持つようになって、そいつらは“ギルス”と呼ばれるようになる。
そいつらはギルスはウチらmemのメンバーでもてこずる相手。それをあんさんはたった一人で、この土地の支部と一年ものあいだ戦い続けて、しかも潰してしもうた。……支部ともなればギルスが二十体はおるはずやのに。せやから、即戦力のあんさんを勧誘しにきたんや」
一気にそこまで言って、最後に鈴本は笑顔を見せてから小さな紙を投げてよこした。
それが落ちる前に俺はキャッチ。
書かれていたのは携帯の番号だけだった。
「来週までには、返事を聴かせてくれや。ほな、な」
言うだけ言って、鈴本は暗闇の中に沈むように消えていった。
残された俺だけが、狭い路地で言葉を吐く。
「…………mem、ね……」
俺は紙をポケットにしまうと、なにごともなかった風にその場を後にした。
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