復讐者と殺戮狂の腕試し

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「ボーっとしてんじゃん、朔真」  友人に声をかけられて、だが、それでもやっぱり俺は緩慢な動きで反応した。 「おー、浜田……なんでお前ここにいるんだ? 部活は?」  俺はゆっくりと顔を右に九十度曲げて、“化け物ルーキー”の異名を持つボウズ頭の浜田 将平にそう言った。  今はもう四時過ぎ、部活はとっくに始まっている時間だ。  しかも浜田はウチ唯一の強豪・野球部員。  遅れたらタダじゃすまない。 「俺今日、日直やったけ、教室が開いてるから閉めて来いって言われたんよ。てか、お前も部活あるんやろ? いかんのかい」  浜田は気怠げにそう言うと、俺の隣の席に腰を下ろした。 「んぁ~、今日は……サボる」  俺が天井を仰ぐように呟くと、浜田はニヤけ顔を作った。 「まぁ、弱小テニス部に“天才少年”朔真 酉 とまともに張り合える奴はいないかぁ……。だから俺と一緒に野球部入ろうって言ったのにさぁ」 「別に俺は天才じゃない」 「はぁ?? どの口が言ってんだコノヤロー!」  カケラも謙遜なんて気持ちで言った訳がないのに、なぜか浜田が激怒。  危険を察知し、俺は即座に席を立って教室を出ようとしたが、あえなく失敗。  浜田に先回りされ、俺は両頬をつままれて出口への道を封鎖されてしまった。  てか、顔が近い!  なんか、放課後に二人っきりでこのシチュエーションは誤解を産みそうで嫌だったが、仕方なく浜田に従って近くの椅子に座った。 「俺の140km級の投球を軽~く場外送りにしてくれた他にも、色んな部活動の仮入部でことごとく三年の先輩達をぶち破り、四月入ってすぐにあった実力テストでは二百人中十位! どっからどう見ても天才だろうが! つーか化け物だよ!!」 「小五のころから130kmの投球をしてたお前の方が化け物だよ。てか、中一で140kmも人間としてありえないけど」 「それ言ったら中一で50mを6秒2もありえないって」 「化け物同士だな」 「化け物同士だな!」  お互いの化け物加減について軽く言い合って、俺が呆れながらしめくくると、わははと続けて浜田は笑ってやっと俺の頬を解放してくれた。  そうすると、浜田はそのまま片手を振って教室を出ていく。 「ま、そんなお前でも悩み事はあるんだな。じっくり考えたいんなら家に帰ってからの方がいいんじゃないか? 俺でよけりゃ、明日相談に乗ってやるよ。んじゃな」
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