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「あ、あぶねえあぶねえ!!」
『ったく、気をつけろよ。お前が死ねば俺まで道連れなんだからな』
「そんなこと言ったってよ、仕方ねえだろ。おい、この鎌どうやって使うんだよ」
改めて鎌に目を向けると、その大きさに驚かされる。
いくら軽いっつったって、こんな洞窟の奥じゃまともに振り回せやしない。
振ったとたん壁にぶつかってやられる隙が出来ちまう。
『そこは心配するな。お前はただ我武者羅にソレを振り回せばいんだよ』
「だから壁に食い込むって――」
『いいから、ブツクサ言ってねえで振れっての! ……あと、来るぞ?』
「え? おお!」
また来やがった。っち、もうこいなりゃヤケクソだ!
俺は両手で巨大鎌を思い切り斜め右下から切り上げた。絶対壁に突き刺さるか弾かれる勢いで。
だが、鎌が壁にぶつかる衝撃が伝わらなかった。
しかし、
「…………」
代わりに別のものが伝わった。
それは、
『――よっしゃあ!』
切った感触。あのムカデの化け物を切った感触だ。
壁に当たるはずだった鎌は壁には当たらず、幽霊のように実体のない化け物を一撃で干物のように切り開いた。
その切断面は見事としかいいようがないほど無駄がなく、スパッと切れた。
『それでいいんだ』
「これは、いったい」
俺は何が起きたのか自分でも理解できなかった。
襲ってきた化け物を切っただけといい簡単な判断能力も麻痺していたのもしれない。
仮に正常に機能していたとしても、俺にはその時間もなかっただろう。
なぜなら、まだウヨウヨしている化け物どもが一斉に飛び掛かってきたからだ。
頭の中でアイツが冷静に喋る。
『ほら、さっさと動きやがれ』
「お、おう」
とりあえず、考えるのはコイツラを片付けてからだ。
俺はもう一度鎌を大きく振った。今度は横に振った。
人型の胴体を胴斬りにし、オオカミ型の鼻先からケツまで真っ二つにした。
何も考えずヤケクソに振った時とは違って、今度は自分の意思で振った。流石に二度も振れば誰でもわかるはずだ。
この鎌は、自分の意思で切るべきものとそうでないものを判別していた。
現に今、壁だけすり抜け化け物だけを切っている。
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