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それが鎌の意思なのか、それともアイツの意思なのかまではわからなかったが、今ハッキリとわかってることが一つある。
「これなら、絶対死なねえってことだ!」
最初は恐怖に体をブルブル震わせていた俺だが、鎌を持って化け物を切ってから自分でも驚くほど鎌を無茶苦茶に、でも軽々と振り回している。
化け物どもが面白いように斬られて消えていく。
この時俺は、ゲーム感覚で化け物どもを斬って斬って斬って、斬りまくった。
俺は知らぬ間に笑顔にすらなっていた。
これじゃまるで、現代に蘇った切り裂きジャックだろ。
「まあ、いっか」
『そうそう、気にするなって』
化け物は斬っても赤い血は出なかった。幽霊みたいなもんだから当たり前か。
だから何匹斬っても服や顔が汚れることはない。出たとしても、この時の俺は気にせず鎌を振り続けたに違いない。
「おりゃああああ」
そして最後の一匹、口の裂けた不気味な子犬を蹴り上げ浮いたところへ縦に1字に斬り殺した。悲鳴も上げず子犬は泡と消えた。
「ふう、やっと終わったか」
やることが終わるとどっと疲れが走り、俺はその場に座りこんだ。
ことが終わると俺の目からアイツが煙となって抜け出し、形を構成していく。
俺は疲れて座るのも辛くて、バタリと大の字で横になった。
手にあった鎌は、アイツが形を成すといつの間にかアイツの手に収まっていた。
「お疲れさ~ん。しかしお前、初めての退魔戦にしちゃ中々ヤルじゃなえか。及第点をやってもいいぞ」
「ありがとよ」
誉められてるみたいだが、とりあえず返事だけは返した。
「こりゃツいてるぜ。素質もありそうだしな」
(やべえ、眠くなって……きた……な)
アイツが一人で勝手に盛り上がって、一人で勝手にブツブツ言っているようだが、そんなの睡魔に押し潰されて聞こえやしない。
アイツの血を飲んだ副作用が、無茶苦茶に鎌を振り回した結果なのか、とにかく体が早く早くと休息を寄越せと睡魔を使って要求しやがる。
化け物は全部倒したとはいえ、まだ安全とはいいきれないこの洞窟の中で眠りに落ちるのは危険だ。
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