【プロローグ その日が始まる】

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「わからねえか? まあ当然だよな。わかるほうがどうかしてる」 ガキが肩を落として笑いやがった。なんだかどこかで見たことあるな、このムカつく態度。それもつい最近だ。 「俺だよ、俺」 オレオレ詐欺ではなさそうだ。 ガキはいきなり俺に猫騙しを食らわすやがった。俺は反射的に目を閉じちまった。 もういいぞとガキが話しかけた。 目を開けると、そこにはさっきのガキではなく、アイツがいた。あの見た目がマンガに出てくる悪魔みたいな奴が目の前に。 「さっきのガキはお前か」 「ああそうだ。あの時お前横になって動かなくなりやがったから、この姿じゃ運べないからな」 また変身した。 「運びやすいよう、この姿になったんだよ。服はそこに置いてあったやつを着たんだよ。ちっと臭うがな」 それは紛れもなく先輩の洗濯物だ。 黒いドクロのTシャツに擦りきれたジーンズ。流石に洗濯物で汗臭かったらしく、簡単に水洗いしたのだろう。上下ともびしょ濡れだ。 「やっぱり外の空気は最高だな。洞窟のジメジメした空気とは大違いだぜ」 両手を広げて大きく深呼吸するアイツは、川から上がると広い庭を駆け回った。 素足でびしょ濡れなのもお構いなしだ。 蝶を見つけて捕まえようとそっと近づくが逃げられ、その後ろで手を伸ばして追いかける。 その姿は、どこからどう見ても子供だ。 八百年も生きてといっても、見た目は中学一、二年といったところで、俺から見れば十分ガキだ。 「あ、コケた」 石に躓いた。顔から思い切り派手にコケた。 流石に痛がっていたが、すぐに仰向けの大の字になり大笑いした。 その姿はガキの頃の俺とは正反対だ。 ガキの頃の俺は、同じ位のガキたちが遊んでいるのを遠くから眺め、一人で空の絵を描いてた。 一緒に遊ばないかと誘われたこともあったが、俺は無視で返すばかりだった。 「ところでよう」 「ん?」 「お前でうやって俺をここまで運んだんだよ」 「だからこの姿で……」 「いやそうじゃなくて、どうやってあの滝から出たんだよ。お前あの滝は結界だから出られないって言っただろ。その姿で俺を滝の前まで運ぶことはできても、外には出られないだろ」 「それなら簡単だ。お前の体を借りたんだよ」 「俺の?」
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