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「ふあああああ……」
俺は目覚まし時計とカーテンの隙間から突き刺さる眩しい朝日の光りで目を覚ました。
ジャリリリリリという目覚ましらしからぬ音が寝起き半覚醒状態の耳に響く。夕べ珍しく寝酒を飲まなかったこともあって、今日はスムーズに時計を殴り飛ばして止めれた。
隕石の直撃を受けても大丈夫という言葉に惹かれて購入したが、実際に隕石にぶつかったと証明はされていない。少なくとも今まで使ってどの目覚ましよりも頑丈というのは証明されている。
「面倒だけど、飯にするか」
冷蔵庫から昨日の残り物のサバ缶を皿に盛り付け、冷たいままの味噌汁を一口すすってから椀に入れた。
ご飯だけはちゃんと炊いてあるから問題はない。
「あむ、うむ、あん」
いつもとは少し違うが同じ朝の一人だけの朝食。くわえて今日は日曜日だ。食い終わったら貯まりに貯まってしまった財布の小銭を減らすために近くのゲーセンやネットカフェで暇を潰すかと、簡単な一日の計画を立てていると、
プルルル、プルルル
枕元に放置していた携帯電話が鳴った。びっくりした拍子に味噌汁をこぼすとこだった。
箸を口にくわえて携帯を手に取ると、相手は学校の先輩だった。
(なんだろう)「はい、もしもし」
「おお、起きたか我が後輩よ!」
電話の向こうの声の主は北条淳(ほうじょうじゅん)。
帰宅部のくせに運動部よりも運動神経がよく、学年の期末テストじゃ理数系ではいつも一番だ。
明るく陽気な性格で、クラスや学校だけでなく他校の女子からもそれなりにモテているという噂を耳にするが、告白されても全部断っている。
「大変なんだ。なにが大変かって、とにかく大変なんだ! 大至急俺ん家に来てくれ!!」
本人はマジで焦っているのか、それともただ茶化しているのか電話からではわからなかった。
「はいはい、わかりました。今朝飯なんで食べ終わってから行きます」
(なんだかどうでもいいけど、嫌な予感がするな)
サバとご飯を味噌汁と水でノドに流し込み、食器を流しに、パジャマをベッドに脱ぎ捨て私服に着替え、とりあえず原チャリを飛ばして先輩の家に向かう。
ヘルメットと免許証を忘れて戻った。
しかし、俺は甘かった。まさか先輩の用事とその帰りにあんなことが起きるなんて、その時の俺は想像どころか夢にも思っていなかった。
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