【プロローグ その日が始まる】

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二十分原チャリを走らせ、ようやく先輩の神社に着いた。 先輩の家は先祖代々から続く由緒正しいところらしく、先輩はその二十一代目に当たる。 鳥居もさることながら、石畳の道の横に並ぶ狛犬(こまいぬ)や灯篭(とうろう)からは歴史すら感じられる。 「こんちは。先輩いますか~。雷魔です」 玄関から呼びかけてみると、前の襖が音の速さで開き、一人の男性が現れた。 相手は若い丸メガネ男。まだ朝の七時前で男はシャツとパンツ一丁だ。髪は短い金髪、口と耳には丸いピアスまで付けたこの男こそ、なにを隠そう北条淳先輩その人なのだ。 初めて会う人は、とてもこの若造が二十一代目の住職とは信じないだろう。 「待ってたぞ我が後輩よ。早速お前に頼みたいことがある」 「なんですか?」 (マジで嫌な予感がする。というか嫌な予感しかしてこない) 「おお、まず飯作ってくれ!」 やっぱりかよ!!またこれかよ、この人は。こっちはせっかくの日曜をゲーセンに費やそうと決めていたってのに、なにが悲しくて先輩の朝飯を作らにゃならんのだ。 「冷蔵庫の中、適当に使っていいからな」 人を呼びつけてといて、当の本人は布団に入って二度寝かよ! ったく。 冷蔵庫を開けると、案の定中には肉と野菜が七対三の割合で入っていた。坊主なら肉より野菜を多く入れとけよ。 ため息を一つこぼしながらも俺は包丁を手にキャベツとニンジンをみじん切りにし、肉を食べやすい大きさに切り分け、油をしいたフライパンで炒める。 卵をボールに四つ入れて少し混ぜ、別のフライパンでオムレツを作った。 ご飯もあるからオムライスにしようかと思ったが、ケチャップがなかったので断念した。 流しにシジミが水に浸してあったから使っていいか聞いてからシジミの味噌汁を作った。 朝飯が出来たから先輩を起こす。 「先輩、朝飯が出来ましたよ。起きてください」 「ぐうぅぅ~、ぐうぅぅ~」 だめだ。起きる気配すらすない。 ようし。 肉野菜炒めを先輩の鼻の前に起き、先輩愛用の扇子で匂いを送る。 ピクピク (お、反応あり)
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