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皿を遠ざけると、釣り上げられた魚のように体が自然と布団から離れていく。
そのままちゃぶ台まで誘導したところで、
「オリャー」
扇子をハリセンに変え、先輩の横っ面を叩いた。
スパーンと響きのいい音と衝撃で先輩が目を覚ました。
「目が覚ましたか?」
「おお、ばっちりだぜ!」
笑顔で親指を立てて見せた。
先輩は夢中で朝飯に食らいつき、ものの五分で綺麗に平らげた。
作り手としても見てて気分が良かった。
「ごっそさん。相変わらず男のくせに料理上手いよな雷魔は。まあ、そこがいいんだがな」
「へいへい」
(ったく、調子のいい人だ)
「その調子で掃除も頼む」
「えっ?」
この時、俺の思考は止まった。
「それから買い物と洗濯もな」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」
「じゃあ俺もう一眠りするから、よろしく。あと出来れば宿題も頼む」
「あの、先輩、話聞いてますか」
「ぐうぅぅ~」
「しかも寝るの早っ!」
やられた。完全にやられた。確実に休みが潰れた。俺はその場にひざまづいた。ズ~ンと肩に重たいものが乗ったようだ。
「くっそう! こうなったらさっさと済ませてさっさと帰るぞ」
俺は原チャリを飛ばして買い物を済ませ、戻るなり右手に掃除機、左手に埃落としを持ち家中を掃除しまくった。
先輩の部屋は真っ先に済ませた。
机の中にはお経や数珠や学校生活に必要なものの他に、十代男子の八割が必ず所持しているエロい内容の本も入っていた。
何故か先輩の寝ている布団の下にも隠してあった。つうかこの量は、隠しているというより敷いているといったほうが正しい。
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