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(死ぬまでここにいるのかな…僕は)
ため息を吐く。
小さく吐いた息は忙しなく動き回る研究者たちの足音によって掻き消された。
ここの生活に不満が無いわけじゃない。
かといって、逃げ出そうとすることが得策とも思えない。
まだ足枷が付けられていなかった頃に脱走を試みた時、いくら探してもここからの出口は見付からなかった。
5日近くさ迷ってわかったことといえば、この施設の広大さと僕以外にもたくさんの実験体がここに集められているということ、そして、ここから僕が逃げ出すことは不可能だということくらいだった。
僕が部屋から脱走した5日間、研究者たちが僕を探し回ることはなかった。
出口を探すことを諦めた僕が部屋に戻ると、見計らったようにシライと名乗る男が訪ねてきて、白衣の人達が何故僕を探さなかったのかを告げた。
僕が外に出られないことがわかっていたからだ、と。
研究者たちをまとめているらしい彼のいうことには、この施設には出入りするためには『あるもの』が必要らしい。
それが何かまでは教えてはもらえなかったけれど、今の実験に耐え続ければいつか僕にもそれを手に入れることができるだろうという。
それが本当のことなのか嘘なのかはわからなかったけど、他に選択肢のなかった僕にはおとなしく時を待つ以外なかった。
その一件から、見張りのためなのか時々シライさんが来て一方的に話をして帰っていくようになった。
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