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(またあの夢…)
いつも通り、暗闇の中で目を覚ます。
起きた直後の働いていない頭で今見た夢を思い出してみる。
多分、自分の過去というものなんだろう。
場所に何となく見覚えがあるから…
(あくまでも【多分】だけど)
此処に来る前の事は殆ど覚えていない。
覚えているのはただ一つ。
一人の少年。
いつも夢に出てくる少年だ。
風になびく長めの漆黒の髪。
血のように鈍く光る深紅の瞳。
記憶の中、常に弧を描いている口元。
そう、記憶の中の彼は常に不敵な笑みを浮かべていた。
(彼はいったい誰なんだ…?)
自分の記憶に問いかけても答えは出ない。
(いつか思い出す時は来るんだろうか)
ふと考えてその問いの無意味さに自嘲する。
そんなことを思い出してもきっと意味はない。
僕はここで一生を終えるのだから。
「…僕は此処にいる」
自分の口から出た言葉に気付かず、僕はいつも通り眠りに落ちた。
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