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「……」
「待ちなって!」
車内から
声をかけた青年が出ると
進行方向に
立ち塞がる感じで立っている為
少女は足を止めた
景色は徐々に明るくなりはじめ
1月の早朝の凜とした空気が
周りを包み
生まれたての元気な朝の光りが
少女の姿を正確に映し出す
「あ…あのさ…」
「……」
やっぱり幽霊ではない安堵感を
改めて側で見て感じるが
二人の青年は…
「……!」
朝日が照らす少女に見とれて
声が出なかった
それは
あまりに現実離れした
言葉では言い表せないほどの
『美しさ』だったから…
「……」
二人の青年が
凍りついたままなので
少女は無視して傍らを擦れ違う
様に通過しようとした
「き、君さ…待って!」
「……!」
つい、青年の一人が
側を通過しようとする
少女の腕を掴んでしまった!
「痴れ者…」
「え?
今なんて言ったの??」
少女の声は
春に遊ぶ小鳥の様な軽やかさで
どんな楽器を持ってしても
凌駕する事叶わぬ程の
凛々しく気高き清音だ
それが
この二人の青年が聞いた
最初で最後の
少女『篠田やそ』の声だった…
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