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その剣士『近藤 勇』は
永倉の声も聞こえないかの様に
目を閉じて立っていた
冬の張り詰めた空気の中に
近藤の激しい殺気が漂い
迂濶に近寄れば
名刀虎徹のサビにされそうで
声も出せない
「……」
(居合いか…
少し見て行くか…)
永倉は
音を起てない様に気を遣い
その場の道場の隅に腰を降ろす
《居合い》とは
日本刀を用いて抜刀から納刀
および諸作法を修練し
人格の鍛練なども含めた
自己修練の事
または、それを用いて
剣撃による攻撃方法でもある
「……」
暫く
道場内の二人が沈黙し
外の木枯らしだけが耳に入る
まるで
永遠かと錯覚するかの様な
静寂の中…
突然!
『キンッ』
「……な!!」
永倉は驚いて
つい声を出してしまった!
近藤の居合いの
抜刀が見えなかった
さらには
刃の軌道も早すぎて
正確には見えない程の斬撃だ
『ドササッ』
「永倉、、居たのか」
音を起てて崩れる
真っ二つになった畳の傍で
納刀した近藤は
まだ驚いている永倉に
声をかける
人当たりの良い優しい顔の
永倉の顔が
凄惨な程に美しい居合いで
戦慄に強張ったままになった
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