「現」ノ章.第一話

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  「…ハハッ また腕を上げましたね さすが天然理心流四代目です」   「下らんな そんな肩書きなどは」   永倉は褒めたつもりで言ったが 近藤には あまり興味無い様子で ぶっきらぼうな返事に 少し呆れた   「まぁ、今日は 見学に来ただけではないんです 近藤さんに面白い報せがあって わざわざ来たんですよ~」   さっきまでの 張り詰めた空気を和らげる様に 呑気に話し始める永倉   対して試衛館の館長 近藤勇は険しい顔をしたままだ 傍目から見ると とても二十七歳には見えない程 老けた印象さえある   「来年の 将軍、徳川家茂様の上洛に際し 京都の治安維持と警護の為 浪士組織を募集していると 聞いたのです」   「……!」   永倉の言葉に 興味を示した近藤に さらに興味が出るように続ける   「旗本や御家人の方も参加し 『京都見廻組』を創られ  それとは別に さらに剣客をまとめ上げて 会津藩松平様御預にて 『浪士組』を創るそうです」   つまり 京都に行く将軍の 警護をする組織を募集していて 会津の松平という大名が  組織を創るという報せを  永倉新八が持って来たのだ
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