第1章 -偶然の掌-

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    「メールっ!!」      高鳴るというよりも、飛び出しそうになったという表現が適切か。    いきなり叫ばれたものだから、反射的に体が向いてしまう。    対面……までは残念ながらいかないが。    高梨は僕を真正面にとらえているが、僕は高梨に対し横を向いたまま顔だけで高梨をとらえていた。    高梨はピンクの丸い携帯電話をたたんだまま突き出している。僕の知る限りその状態ではメールはできない。    というよりむしろ……   「アド知らなかったら明日連絡できないじゃんっ。交換しよっ!」    ……アドレスがわからないから、メールなどできるはずがないのだが……はじめから聞くつもりだったようだ。    相も変わらず無表情の僕は、目線を落としながら呟くように言う。   「別にいいけど……」   「ホントっ? そのケータイ赤外線付いてるよね? じゃあ私送るね?」    花が咲いたみたいに明るい笑顔を見せる高梨。そう言って勝手に自分の携帯を操作し始める彼女は、僕の目には少し強引であるように映った。別に断るつもりはなかったし、正直早々に会話を切り上げてくれることは嬉しい。    受信中の表示が少し長かったことで、画像でも添付されているんだろうとか考える。この後送信も待っているのかと心の中でため息をつく。    そうやって逃げるのが僕のいつものパターンだ。      とりあえず、誰か助けてほしい。が、本音。        その後話したことはあまり覚えていない。      僕には悩みがあって、それが今の僕を苦しめている。      僕は…      僕は……
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