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「メールっ!!」
高鳴るというよりも、飛び出しそうになったという表現が適切か。
いきなり叫ばれたものだから、反射的に体が向いてしまう。
対面……までは残念ながらいかないが。
高梨は僕を真正面にとらえているが、僕は高梨に対し横を向いたまま顔だけで高梨をとらえていた。
高梨はピンクの丸い携帯電話をたたんだまま突き出している。僕の知る限りその状態ではメールはできない。
というよりむしろ……
「アド知らなかったら明日連絡できないじゃんっ。交換しよっ!」
……アドレスがわからないから、メールなどできるはずがないのだが……はじめから聞くつもりだったようだ。
相も変わらず無表情の僕は、目線を落としながら呟くように言う。
「別にいいけど……」
「ホントっ? そのケータイ赤外線付いてるよね? じゃあ私送るね?」
花が咲いたみたいに明るい笑顔を見せる高梨。そう言って勝手に自分の携帯を操作し始める彼女は、僕の目には少し強引であるように映った。別に断るつもりはなかったし、正直早々に会話を切り上げてくれることは嬉しい。
受信中の表示が少し長かったことで、画像でも添付されているんだろうとか考える。この後送信も待っているのかと心の中でため息をつく。
そうやって逃げるのが僕のいつものパターンだ。
とりあえず、誰か助けてほしい。が、本音。
その後話したことはあまり覚えていない。
僕には悩みがあって、それが今の僕を苦しめている。
僕は…
僕は……
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