記憶の谷

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一方異世界では今夜のダイブを固唾を飲んで見守っていた 最初から成功するとは誰も考えていない それ処か「最初からあの度胸は並大抵の者ではない」 「やはり選ばれし者は違います」とか絶賛されて見通しの明るい話題で大いに盛り上がっていた 「彼女が来てさえくれればこの状況を回避出来る」 「我々を蝕むこのパラノイア(妄想が肉体に影響を及ぼす病気の総称)を一掃してくれるはずだ」 彼等はそう信じて止まないのだ 一体『佳奈』の何処にそんな力があるのか 当の本人が一番疑問を抱いている が彼女は日々の寝不足と残業の疲れをここぞとばかりに今夜は深い眠りとお友達 鏡の奥も今夜は静かな様に思えた しかし今回のダイブを心良く感じている者ばかりではないらしい 穏やかに思える水面もその下では活発にうごめく反抵抗組織の黒い影が見え隠れする 「サク・・残念だったな━━今回は・・ フッ・・あの感じなら来そうだがな」 不敵な笑みを洩らす男が挑む様な鋭い視線を突き刺して来た 「あぁ来るさ・・・ 無事にね━━━」 冷たく言い放つ言葉の裏で危険と言う文字が浮かぶ 忌々しいレジスタンス共 何を企んでいる
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