誰も知らない街

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『じゃあね』 レストランを出た所で一言告げ、元々の目的であったタクシー乗り場へと歩きだそうとした。 『あっ…待って…』 早くこの場から消えさせていただきたい… 『何?』 『あの…お礼を…』 千円もしないランチを食べれない少年が、何を言っているのだろうか… 『いい。千円拾ったと思って気にしないで』 『でも…』 『あたし、約束の時間だから。じゃあね』 歩き始めたあたし。 後ろからまた聞こえ始めた足音。 いい加減にしてもらいたい… 『何?!』 『お礼に送ります!』 どう見たって18にはなっていない少年。 関わりたくないけど… 聞いてみるか… 『何で送ってくれるの?』 『これで!』 自信満々に指差したのは、彼が座っていた場所に置いたままの自転車… 『さようなら』 右隣で、ドアの空いていた客待ちのタクシーに乗り込んだ。
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