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吉平は正面に立つ吉昌を見据えた。
「なあ吉昌。真明は何故これほどまでに腕を上げたと思う?おっと、修練を積んだとかつまらない事は言ってくれるなよ」
「…………興味が」
「無いなんて言わせない」
吉平の語気が強くなる。美日は吉昌の袖を握り締め、兄弟の間で交わされるやり取りをじっと見守った。
「分かっているのだろう、吉昌。執念が……そうだな、真明好みの綺麗な言い方をすれば“想い”ってやつか。強い思いが人間を力への欲求に駆り立てる」
「…………」
「その思いが善いものか悪いものかなど関係ない。いや、そもそもその判断自体が怪しいものだ。とにかく、力を渇望するのが人間というものさ」
「……何が言いたい」
吉昌の棘のある声音に、吉平がふふっと唇を歪ませた。
「お前は見ないふりをしているだけだ。本当は気付いているんじゃないか、吉昌。真明の強さ、それはお前を……」
「黙れ」
空気が凍りつく。美日は思わず吉昌の袖を放していた。目の前の陰陽師は、先刻までの喜怒哀楽を垣間見せない青年と違う人物のように思えた。その白い狩衣に包まれた背中に静かな怒りが満ちている。あまりの剣幕に、かえって吉平の方が愛嬌のあるように見えるほどだ。
吉平はわざとらしくため息を吐き出すと首を振った。
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