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陽射しは少しづつ傾いてきた。
空が少し赤くなり…うっすらと…ひとつの大きな星が見え始めた。
『私のお母さんは野性で、私は生まれた時から兄弟と共に生きる知恵を学んできたわ。だけど…私がまだ小さい頃に…お母さんは車に跳ねられ…。』
七子は俯いた。
そしてゆっくり話を続けた…。
『お母さんがいなくなってから…自分達だけで必死に生きようと努力したわ。たまに悪さもして人間に嫌われたりしたけど…生きるためだもん。でも人間って勝手ね…捨てる食料はあっても野良猫にくれる食料はないんだから。』
六助は黙って話を聞き続けた。
『お母さんが亡くなってしばらくは兄弟みんなで助け合ったわ。だけどいつの間にか一匹づつ帰ってこなくなって…最後は私だけになったの。そしてこの神社に迷い込んだ…。早速次の日には…おばあちゃんが私を見付けたの。最初は警戒したけど…人間にはいろんな目に合わされてきたから。でも…おばあちゃんは何度も何度も私に声をかけてくれたわ。小さい子猫を抱えて…。いつしか…あまりにも優しそうに抱えるその手に触れられてみたくなって近付いてみたの。それからは毎日おばあちゃんがお世話をしてくれたわ。…あの祭りの日までは………』
七子は少しうつむいた。
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