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タカおばあちゃんが神社に来なくなってどれくらい経っただろうか…。
六助と七子は今日も生きるために必死で餌を求め歩いては神社に戻ってきた。
タカおばあちゃんが来ていないか確認するために…。
六助は七子にいろんな知恵を学び少し逞しくなった。
そんな変化を六助自体も感じとっていた。
子猫から少年時代を経て大人になっていく…そんな気分だ。
そんなある日…
風が気持ちよく…自慢のヒゲを靡かせる朝…
遠くから近付いてくる懐かしい人影…!
『七子!来て!タカおばあちゃんだ!!』
少し前かがみ気味になり、杖をつきながら…六助のところに近付いてきた。お弁当袋を肩からぶら下げて…。
『六助…、長い間すまなかったね…。おや、七子かい?元気にしてたか?懐かしいのぉ…』
涙を浮かべながらタカおばあちゃんはお弁当箱をひろげた。
『見たところ…私がいない間、誰か面倒みてくれたわけでもなさそうだね…可哀相に…さあ、お食べ。しっかりお食べなさい…。』
久しぶりにタカおばあちゃんから貰える食事に有り難みを感じながら、二匹は分け合って食べた。今日はいつもの残り物ではなく、わざわざ作ってくれたようだ!お米に卵焼き、ニボシまで入ってる!!
すごく、すごく嬉しそうに食べる二匹を穏やかに眺めながら…ときに撫でながらタカおばあちゃんは事情を話した。
いつものように神社に向かってる途中、小さな段差につまづき…一人では歩けなくなってたらしい。
タカおばあちゃんのようなお年寄りの足のケガはかなり致命的だ。
そんな中、タカおばあちゃんは懸命にリハビリを繰り返し…頑張った。
六助達が生きる事と戦っている間、タカおばあちゃんも戦っていたのだ。
そしてようやく再会できた…。
タカおばあちゃんの目からはいつしか涙がこぼれていた…。
七子は優しく涙を舐めた。久々の人間のぬくもり…。
六助は膝に座った。
七子も肩を並べて座った。
お互いに話したい事はいっぱいあった。
けど…
今はこの温もりだけで全てが伝わる気がした…。
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