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タカおばあちゃんは近くの古い椅子に向かった。
『風情があっていいねぇ』
と、言いながら椅子に舞い落ちた桜の花びらを少し掃って腰掛けた。
六助はタカおばあちゃんの膝に飛び乗り白い猫の事を考えていた。
『どこの猫だろう』
『名前は何て言うんだろう』
『…また会えるかな』
六助はいつの間にかタカおばあちゃんの暖かい膝の上で眠ってしまった。
気持ち良さそうに眠る六助にタカおばあちゃんは優しく撫でながら語りかけた。
『六助…お前はここに捨てられた六番目の子猫だった。前にも話しただろう?』
遠くを見ながらタカおばあちゃんは話を続けた。
『同じ日にもう一匹、ここに迷いこんだ猫がいてな…それはそれは綺麗な白い猫だった…。六助と代わりばんこで抱っこしてあげたのを今も覚えているんじゃが…。』
桜がまた少し、神社にまで舞いながら…
少し寒く感じる風の中でタカおばあちゃんは話を続けた…。
『その猫には七子って名前をつけてあげたんじゃ。わしによく懐いてくれとったなぁ…。』
タカおばあちゃんはため息をついた。
『数年前の祭りの夜、神社の隅に隠れるようにいた七子を見付け、気に入った家族がいてな…。七子はそこの娘が手を伸ばすとゆっくり近づいていきおった。大事そうに抱えられた七子はそのままいなくなったんじゃよ…。別れは言えなかったけど…幸せを願って遠くから見送ったのを今も覚えとる…。』
六助はすっかり深い眠りについていた。
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