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「ずいぶんと気にかけてやっているな…お前にしては珍しい」
銀月は自分の足の上でゆらゆらと左右に揺れる小さな頭を上から下へと何度か撫でていると、丸く大きな瞳がじっと顔を見上げてきていた。目が合い、反射的に笑顔が出てきた後に少年は銀月の身体にしっかりと腕を回して抱き付いてくる。
「ならば私よりもお前がつけてやれば良いだろう?頭領から貰った名、皆が認めると思うが」
「それではあからさまに俺の気に入りだと言うようなもの…羨望を超えて嫉妬の的にされるじゃろう?」
傍らに置いていた杯を取った銀月、そんな彼女を眺めながら話し続けた露鬼は空だった杯に酒を注いでやり、己の杯は天を仰ぐようにして中身を一気に喉へと流し込んでいく。
露鬼に注がれた杯で天の星を移し、大きく息を吐いた後にゆっくりと唇まで杯を持っていく。ほんの僅かが唇に触れただけで焼けるように熱くなる酒を飲み干し、次に注いだのは今まで飲んでいた酒。既に空になっていた露鬼の杯にも注ぎ入れてやるが、彼の杯は余りにも大きすぎる為に最後の一滴まで注いでも満足するには程遠い量だろう。
「狐がつけた名では少々弱くないか?」
「…俺に名をつけたのはお前だろうが」
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